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輸液混入~検査室あるある5~

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ぺんさん
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点滴している時に採血することがあるけど、検査結果は大丈夫なのかな・・・

点滴をしている時に、検査のための採血を行うことはそれほど珍しいことではありません。例えば24時間の持続点滴のように、長時間点滴を続けている場合などには、その途中で採血をする場合もあります。本来、正しく採血されれば問題はありません。しかし稀に、検査結果に多大な影響を及ぼすことがあります。
点滴と検査について考えてみようと思います。

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「点滴」は、水分や栄養、薬剤などを少量ずつ持続的に血管から投与する注射療法です。この時、体内に投与する液体を「輸液」といい、「水分、電解質、糖質、栄養などが含まれる50ml 以上の注射薬」と定義されています。

輸液の目的には、体に不足した水分や電解質を補って体内の水分バランスを正常に戻す「水分・電解質の補給」と、エネルギーや栄養素の補給をして栄養状態を是正する「栄養の補給」などがあります。また、薬剤を緩徐に投与する場合や、緊急時に薬剤を速やかに投与することができるようにしておく「血管確保」のために輸液を行う場合もあります。

輸液は、その目的によって様々な種類があります。水分や電解質、栄養を補うことを目的にする場合、ブドウ糖や電解質を含むものが使われます。それぞれの成分が含まれる割合は、輸液製剤の種類によって異なります。

点滴は静脈から体内に入れます。使用する血管は、腕や手の甲などの末梢静脈と、鎖骨下静脈のような心臓に近い太い静脈(中心静脈)があり、それぞれ、輸液の内容によって使い分けられています。一般的によく使用されるのは末梢静脈で、水分の補給や抗生剤などの投与などを行います。長期間、食事が摂取できない場合に行う高カロリー輸液や、特殊な薬剤の投与を行う場合は、中心静脈を使用します。

通常は輸液バッグ(輸液を入れた袋)からチューブを介して輸液を静脈に送ります。静脈には「留置針」と呼ばれる針を刺します。「留置針」はプラスチック製の管(外套)とその中の金属製の針(内套)とからなり、刺した後、内套を抜くため、静脈には柔らかいプラスチック製の管(外套)が残ります。

輸液ルートの途中に「三方活栓」という器具がついていることがあります。これはコックを回すことによって液の流路を切り替えることができ、別の点滴に切り替えたり薬を追加する場合に使用されます。治療薬などをシリンジを使って手動で注入したり、別の輸液バックを接続して2種類の輸液を切替て投与することができます。また、採血をすることも可能です。

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点滴中の採血は原則として避けた方が良いとされています。しかし、やむを得ず採血をする場合は、点滴をしている腕と反対側の腕や、別の部位から採血を行うとされています。これは、輸液の成分が検査結果に影響を及ぼす可能性があるからです。

点滴ルートからの採血は、点滴をストップして、点滴ラインと留置針の接続を外し、留置針にシリンジ(注射器)を接続して血液を吸引します。この時、留置針の中には輸液が残っているので、この分を廃棄するため最初の数mlの血液を捨ててから、検体としての血液を採取します。しかし、どうしても検査結果への影響を否定できないため、点滴ルートからの採血は避けるべきとされています。

三方活栓からの採血も、原則としては避けるべきだと言われています。輸液などが混入し測定結果に影響を与える可能性が高いためです。しかし、やむを得ず三方活栓から採血をしなければならないことがあります。この場合は輸液の混入を避けるため、輸液ルート内の輸液や初期流出血液(最初の数mL の血液)を廃棄するなど適切な準備が必要となります。この操作が不十分の場合、ルート内の輸液や生理食塩液が混入し、血液が希釈されたり、輸液成分の影響により特定の項目が異常値を示すことになります。

輸液ルートからの採血は、患者様にとっては、あらたに針を刺されることがなく、苦痛は少ないといえます。しかし、原則として推奨されてはいません。検査結果に影響を及ぼす可能性が大きいからです。ただ、小児や著しく血管確保が困難な場合には、ルートからの採血を選択する場合があります。また、採血が頻回になる手術中も、あらかじめ留置したラインから採血を行います。このような場合は、最初の数mlの血液を破棄するなどの注意点を遵守しなければなりません。

輸液は、水分や電解質、栄養、また薬剤などの投与を目的としていてます。患者様の状況に合わせて、必要な成分や薬剤が選択されます。これらの成分が採血検体に混入すると、検査結果に影響を与える場合があります。例えば、電解質やブドウ糖を含む輸液があります。これが採血検体中に混入すると、この成分と同じ項目、つまり電解質やグルコースの測定結果が、本来の値とは違った値となることが推察されます。また、ブドウ糖などが入っていなかったとしても、液体が混入することによって血液が希釈されることが考えられます。

やむを得ず輸液中に採血をした場合、いつでも必ず、測定結果に影響を及ぼすわけではありません。点滴ルートが入っていない反対側の腕から採血するなどの注意点を遵守すれば、影響は回避可能だと言われています。また、同じ側の腕から採血する必要がある場合は、刺入部から15㎝以上離れた末梢側の血管を選択するのが良いとされています。

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輸液が検体に混入した場合の検査結果は、カリウム7.0mEq/L や、グルコース1000mg/dL といった劇的な値になるというのが、最もわかりやすい例だと思います。しかし、いつでもこのような結果を呈するわけではありません。当然、輸液の内容によって、検査結果に与える影響も変わってきます。

例えば生理食塩液の割合が多く、カリウム等を含んでいない輸液であれば、生理食塩液に含まれるナトリウムとクロール以外の項目の検査結果は、輸液によって希釈された、全体に低めの値になると考えられます。脱水などで失われた水分やミネラルを素早く補う場合、また、一日に必要な水分と電解質を補給して体の状態を維持する目的の場合は、生理食塩液に電解質を加えた輸液となります。組成は様々ですが、検体に混入すれば、電解質の値が影響をうけることになります。エネルギー補給のためにブドウ糖が添加されていれば、グルコースが異常高値となります。一般的に、輸液に含まれている成分は高くなり、それ以外の成分は希釈されて低めの値となると考えられます。

三方活栓から抗生物質の一種であるバンコマイシンを投与することがあります。この場合、バンコマイシン投与の前後に、生理食塩液を注入して三方活栓を洗い流す操作が必要なのですが、これが不十分でトラブルが起きる場合があります。

バンコマイシンのトラフ値測定の検体で、異常高値(中毒域)を経験したことがあります。「トラフ値」とは、連続投与を行う際の、次の投与直前に測定される血中濃度が最も低いとされる値です。薬物の効果が十分得られる血中濃度範囲が「有効域(治療域)」です。この範囲を超えた高濃度で、副作用や重篤な臓器障害などの有害事象が起こる可能性が高くなる値は「中毒域」とされています。

バンコマイシンのトラフ値が中毒域であるということは、パニック値に該当します。したがって、すぐに医師に連絡しましたが、医師の返答は「そんなはずはない・・・」。そこで再採血がされましたが、同じ値でした。その旨を再度報告すると、医師は「今度は末梢からとります」と。その検体の値はトラフ値に相当する値でした。そこで最初の検体はどこから採血したのかと尋ねてみると、「三方活栓から」と。「最初の血液は捨てたのだけどな・・・」とも。結局、その三方活栓は汚染されているかもしれないということで、交換されました。

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多くの場合、採血検体を受け取った時、その患者様がどのような状況におかれているのかは、検査室ではわかりません。急患室からの検体だとか、手術中の検体だとか、特定の検体についてはある程度想像できます。稀には、検体を持ってきたスタッフが患者様の状態を伝えていく場合もあります。しかし通常は、患者様の情報はほとんどないまま、検査を開始します。

臨床検査は、提出された検体を正しく検査し、結果を報告することが求められています。その時、その検体を採取した患者様の状況は、あまり必要ありません。もちろん検査の内容によっては、患者様の情報が必要な場合もありますし、情報が役に立つ場合もあります。しかし、採血検体で検査をする血液検査や生化学検査などの場合は、患者様に関する情報に基づいた先入観は持たずに、ただ検体に向き合って検査を実施した方が間違いが起こり難いように思います。

通常、患者様が点滴をしているかどうかはわからないまま検査を始めます。したがって、検体に輸液が混入していた場合、「検査結果を確認してびっくり」ということになります。しかし、輸液の混入の程度が僅かであったり、カリウムやグルコースの異常高値を伴わないような場合は、「びっくり」とはなりません。輸液の混入があれば、多少なりとも違和感があると思うのですが、前回値との変化や、検査項目全体を総合的に判断しないと、気付くことができない場合もあるかもしれません。

施設の事情にもよると思いますが、一般的には、採血するスタッフ、検査するスタッフ、結果を判断する医師が、それぞれ異なります。そのため、輸液の影響が僅かな場合は、採血時の状況を知らない検査室も、また結果を判断する医師も、輸液の混入に思いが及ばないこともあります。

輸液混入の劇的な結果(カリウム7.0mEq/Lやグルコース1000mg/dLなど)を一度でも経験すると、「輸液混入=劇的な結果」となってしまうことがあります。しかし、輸液の内容によって影響は異なります。希釈された低値を示すことも多くあります。この点は注意すべきだと思います。

グルコース1000mg/dLやカリウム7.0mEq/L という検査結果は、輸液の混入がなくても起こり得ます。もちろん日常的な結果ではありませんが、患者様の病態によっては、そのような結果を示すこともあります。そして、これはパニック値です。速やかに医師に連絡しなければなりません。

結果をみて、「どうせ輸液混入だろう」などと悠長に構えて報告が遅れると、患者様の処置の遅れに繋がることになりかねません。検査結果を総合的に確認し、先入観にとらわれることなく冷静に判断して、的確な対応をすることが大切です。また、僅かな違和感も放置せず、確認することも必要だと思います。いずれにしても輸液が混入した検体の検査結果は正しい検査結果ではありません。再採血などにより、正しい検査結果を得るための対応が必要です。

検体への輸液の混入は、あってはならないものです。多くの場合、採血時の注意により回避可能です。しかし実際には、輸液混入の検体と遭遇することは、それほど稀なことではありません。

病院内で、患者様が点滴をしている姿を見ることはあると思います。しかし、点滴ルートや留置針、三方活栓などについて、正しい知識を持った臨床検査技師はあまり多くはないかもしれません。もちろん個人差もありますし、施設によって事情は異なると思いますが。

検査結果を正しく読み取る力はもちろん必要であり大切です。しかし、点滴など実際に携わる機会がなくても、検査結果に影響を及ぼす可能性のある事柄についての知識も、ある程度は必要かもしれません。どういう状況でどこから採血をしたのかなど、採血者から説明を聞いても、こちらの知識が少ないと理解が深まらないと思います。

輸液が混入しているかどうかは、検体の外観からではわかりません。検査を進めて、結果を確認する時点ではじめて判明することです。あらかじめ、その患者様が点滴をしていることがわかっていれば、参考になることもあるかもしれません。しかし、そのような情報に囚われることなく、広い視野で結果を確認すべきなのではないかと思います。

検査結果の確認は、前回値や基準範囲と照らし合わせながら行います。結果の変動に対して、さまざまな可能性を考慮しながら再検査などを行い、必要であれば医師に連絡をします。その可能性の1つとして、輸液の影響を考えることができるために、点滴の方法や輸液のさまざまな影響について、理解していることが大切だと思います。

検査結果に違和感があったり、信じられないような異常値を確認することがあると思います。その時、輸液の影響を疑ったとしても、医師への連絡は、まず検査結果を正しく伝えることに徹するべきだと思います。そして、それに対する医師の反応の中で、「輸液をしていますか。輸液の影響が考えられると思うのですが・・・」といった提言ができると良いのかなと思います。他の医療スタッフと的確なコミュニケーションをとることも、臨床検査技師にとって大切なことだと思います。

合わせて読みたい👉

「信じられないような異常値」に関連した記事です。読んでみてください。

参考👉

専門的になりますが、輸液に関する記事です。輸液について詳しく知りたい方は読んでみてください。

本記事は診断や治療を目的としたものではありません。あくまでも臨床検査に対する理解を深めていただくための情報や知識の提供の場です。疑問や不安がある場合は必ず医師にご相談ください。

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