システムが停止した時どのような対応をするか

システムが使えない時って、検査はどうするのかな・・・?
電子カルテや検査システムなどのシステムに不具合が生じることは、残念ながらそれほど稀なことではありません。システムが使えないからといって、病院の機能をすべて停止するわけではありません。検査についても同様です。システムが停止時の、主に検体検査室での対応について考えます。

電子カルテや検査システムは、いずれもさまざまなメーカーから出されており、システムの構築のしかたも異なります。また、各施設のシステムは、その施設の状況に合わせてカスタマイズされています。したがって、ここで取り上げるシステムの対応は、一例だとご理解いただければと思います。
検査依頼から報告までの通常の手順
最初に検体検査の通常の手順を整理してみます。
医師は電子カルテに検査依頼を入力し、依頼用のバーコードラベルを出力します。このバーコードラベルを検体に貼付して検査科に提出します。バーコードラベルが出力された段階で、検査システムに依頼が送信されます。

電子カルテから依頼が送信されると、検査科では依頼の内容を確認することができます。検査科では検体のバーコードラベルを受付処理して検査科の部門ごとの採番を行います。検体を検査機器に架設すると、機器がバーコードラベルをを読み取ります。この時、測定機器は検査システムにバーコードラベルの情報を要求します。そこで、検査システムから検査依頼項目などが分析機器に送信され、依頼通りの検査が行われます。分析機器は結果が出ると検査システムに結果を送信します。検査システムで結果を確認し、電子カルテに結果を送信します。

電子カルテと検査システムとの間の、依頼情報や検査結果の送受信は、電子カルテで依頼時に発番されるオーダー番号(依頼用バーコードラベルの番号)に紐づいて行われます。オーダー番号は各検査依頼に固有のもので、多くの場合変更はできません。検査結果を検査システムから送信すると、電子カルテの同じオーダー番号の結果欄に格納されることになります。

医師は、検査をしようと思った時に依頼をするだけでなく、あらかじめ検査予定をたてておくことがあります。入院患者様の検査は計画的に行われることが多く、その場合、バーコードラベルが発行され、検体容器が準備されています。バーコードラベルが発行された時点で検査依頼が検査システムに送信されている場合、電子カルテが止まっても、この検査依頼の情報は検査システムで確認することができます。

バーコードラベルを使用することで、検体の照合などに人手を使うことなく、検体採取から結果報告までが行われます。もちろん、バーコードラベルと患者様との照合は必要で、これが最も重要といえます。ここで間違いが起きると、検体の取り間違いとなり、別の患者様のカルテに結果が反映されることになります。

また、バーコードラベルは正しい検体容器も表示しています。検体容器は検査の内容によって異なり、正しい容器を使用しなければ正しい結果を出すことはできません。システムを介したバーコードラベルを使用することで、検体容器の間違いを防ぐこともできます。

システム停止時の対応
システムの停止は、電子カルテのみ停止、検査システムのみ停止、電子カルテと検査システムの両方停止に、大別できます。
電子カルテのみ停止

電子カルテが止まると、医師はシステムを介して指示をすることができません。したがって検査依頼も、検査依頼伝票を書くことになります。バーコードラベルの発行もできないので、検体には記名したラベルを貼付します。ただし、電子カルテが止まる前に依頼をし、バーコードラベルを発行していた依頼は、検査科のシステムが使用可能であれば、そのまま使用することが可能です。この場合は、そのバーコードラベルを検体に貼付します。

検査科では、バーコードラベルが貼られた検体については通常通り検査システムで受付作業を行い、検査を開始します。
検査伝票と検体が提出された場合は、検体と伝票を目視で照合します。検査の内容と検体容器の組み合わせが正しいことも確認しなければなりません。その後、依頼伝票の内容を検査システムに入力し、依頼用のバーコードラベルを出力します。検体の氏名を確認した上でそのバーコードラベルを貼付し、検査受付作業を行って検査開始となります。

検査が完了すると、検査システムから電子カルテに結果を送信しますが、電子カルテが止まっている場合その作業はできません。したがって、紙の報告書で報告します。この時、検査科に保管する控えの報告書も忘れずに作成します。

電子カルテの復帰後、検査結果を電子カルテに反映する作業を行います。電子カルテ停止前に依頼していた検査は、電子カルテで発番されたオーダー番号があるので、そのまま検査システムから送信作業をすることができます。しかし、電子カルテ停止後に伝票で対応した検査については、簡単に送信することはできません。

まず電子カルテ上に検査依頼が存在しないので、検査依頼を作成する必要があります。ただ、ここで発番されたオーダー番号と、検査科で検査システムに依頼入力をして発番したオーダー番号は異なるため、そのまま結果を送信することはできません。多くの場合オーダー番号の修正はできず、電子カルテと検査システムで異なるオーダー番号を紐づける方法がないため、送信することは不可能となります。

電子カルテ停止時に伝票対応で実施した検査結果を電子カルテに反映するためには、復帰後に電子カルテで検査依頼を入力し、その依頼を検査システムで受信し、そこに検査結果を入力して送信することになります。

ここで、測定機器と検査システムもオーダー番号で紐づけられています。測定機器上でこのオーダー番号を変更することが可能であれば、新しいオーダー番号に変更して再送信することで、検査システムの新しいオーダー番号の結果欄に結果が格納され、これを送信することで電子カルテに反映することができます。

しかし、測定機器もオーダー番号を変更できない場合が多くなっています。メーカーによってはオーダー番号が変更可能なシステムを使用していますが、あまり多くはないと思います。したがって、システムを介して結果を新しいオーダー番号に入力することは、ほぼできません。つまり手動で結果を入力することになります。

測定結果の手入力は誤入力の可能性があります。検査件数にもよりますが、たとえ1件でも、間違いが起きないという保証はなく、原則として手入力はすべきではないと思います。
検査結果報告書は、電子カルテにスキャンして取り込むことが可能です。過去の結果と比較することができないなど、利便性に欠けることはありますが、システム停止という非常時でもあり、安全な方法を選択すべきではないでしょうか。
検査システムのみ停止
検査システムが使用できない場合、システムを介して測定機器で検査をすることができません。電子カルテが稼働している場合、医師は電子カルテから指示を出すことが可能ですが、検査システムが停止状態では、電子カルテから依頼情報を受信することができません。したがって、検査依頼は、電子カルテの入力と同時に依頼伝票にも記載して提出することになります。検体にはバーコードラベルを貼付して提出します。

検査科では、検体と伝票を受け取るとまず伝票と検体を照合して採番します。基本的に、システムを介して行っている手順はすべて必要な手続きなので、手動で行うことになります。バーコードラベルが導入されてから、依頼伝票と検体を照合するという作業が行われなくなっていますが、検体の管理上、部門ごとの採番は必要な作業といえます。

検査システムは使用できないが、測定機器の稼働は可能な場合、検査依頼を測定機器に直接入力して検査を実施することになります。血算のように検査項目にほぼ選択の余地がない場合は、それほど問題にはなりませんが、生化学の場合は、検体ごとに検査項目が異なることがほとんどなので、かなり面倒な作業となります。バーコードラベルが電子カルテで発行されている場合は、そのオーダー番号を使用して検査項目を入力します。そうすることで、測定機器に検体のバーコードを読み取らせて検査を行うことが可能になります。また、システム復帰後、結果を送信する作業が円滑に進みます。

測定が終了すると、通常は機器から検査システムに結果が送信されます。しかし、検査システムが使用できない場合、測定機器から結果を出力することになります。分析機器のオペレーションシステムに報告書の書式を持っている場合もありますが、結果の一覧として出力する機能のみの場合もあります。何らかの方法で印字し、仮の報告書として臨床側に提示します。検査科の控えの分も印字しておいた方がよいでしょう。

検査システムが復帰したら、検査結果を測定機器から受信し電子カルテに送信します。この時、オーダー番号を使用せず患者様のカルテ番号や任意の番号で測定していると、システムへの結果の取り込みが難しくなります。電子カルテ、検査システム、測定機器は、原則としてオーダー番号で紐づいているからです。オーダー番号は桁数が10桁から14桁程度と長い数字の羅列です。手で入力する場合、誤入力が起き易いともいえます。オーダー番号の数字の組み合わせは、年月日と固有の番号など法則があるので、それを理解しておくことも重要です。

電子カルテと検査システムの両方停止

電子カルテと検査システムが両方停止してしまうと、システムは全く使用できません。しかし、検査の測定機器が稼働可能な場合、検査そのものは可能です。この場合、検査依頼は伝票となります。検体には氏名を記載したラベルを貼付して提出します。システム停止前にバーコードラベルが発行されている場合、バーコードラベルは使用可能ですが、依頼情報を確認することはできないので依頼伝票は必須となります。

検査科では、検体と伝票を照合し採番をします。そして測定機器に依頼項目を入力し検査を実施します。このとき、検体の識別番号が必要です。バーコードラベルがある場合はそのオーダー番号を使用すると、後々結果を電子カルテに送信する場合に作業が円滑に進みます。しかし、バーコードラベルはない場合が多いので、なるべくわかりやすい番号を使用することが、検体や結果の管理の上では効率的といえます。

通常、検査結果を確認する場合は、基準範囲と前回値などを参考にし、必要に応じて再検査などを行います。ところがシステムが使用できない場合、前回値との比較は難しくなります。また、性別、年齢、その他の患者情報なども、測定機器上ですべてを把握することは困難といえます。その中で、結果を確認しなければなりません。

大規模な施設では、測定機器に再検査の基準を設定している場合もあるかもしれません。しかし、自動で再検査をする設定は、多くの場合システムを介して行われていて、システムが停止していると機能しないことになります。したがって、再検査の判断は、その検体の結果に対してのみ行うことになります。臨床検査技師の資質が問われると言えるかもしれません。

システム復帰後、検査結果をどのように処理するかについては、システムの停止期間の長さと、その間に対応した検体数を考慮して判断する必要があります。検査結果を電子カルテに送信するためには、オーダー番号による紐づけが必要です。しかし、復帰後にオーダー番号を発行した場合、すでに検査済みの検査結果の番号をそのオーダー番号に変更することはほぼ不可能です。つまり、システム復帰後に、停止中に実施した検査結果をシステムを介して送信することは困難といえます。

電子カルテの検査結果欄に結果を表示したい場合、検査システムから結果を送信しなければなりません。電子カルテで発行したオーダー番号がない場合、検査システムで検査結果を手入力することになります。しかし、検体数や検査項目数の量にかかわらず、手入力は誤入力の恐れがあり、基本的に回避すべきだと思います。報告書をスキャンして取り込む方法が安全ではないでしょうか。
システムが停止したら
電子カルテや検査システムの導入は、大きな利便性をもたらしてくれました。システムがない時代を知らずに仕事をしている人々も多いと思います。これは、臨床検査技師だけでなく、医師、看護師をはじめ、さまざまな職種でも同様だと思います。

システムがあることが当たり前となっていますが、システムはさまざまな理由で使用できなくなることがあります。停電など、短期間で復旧が見込める原因もありますが、サイバー攻撃など先が見通せないものも起こり得ます。

システムが止まったらどのような対応をするか、マニュアル化されている施設もあると思います。しかし、その対応がすぐに頭に浮かぶでしょうか。実際の場面が想像できるでしょうか。

依頼伝票と検体との照合を考えても、例えば、2検体や3検体であれば問題なく処理できるかもしれませんが、10検体、20検体となったらどうでしょうか。かつて、システム導入前の作業経験がある場合は、注意点などノウハウも思い出すことができるかもしれません。たかが伝票と検体の照合ですが、実際に多数検体を処理してみると、そう簡単ではないものです。同姓同名ではなくても、似た名前であったり、手書きの文字が読み難いなど、意外と落とし穴があるのです。

システム停止時にどの程度の診療体制を続けるのか、それぞれの施設で方針があると思います。各部門ごとに、それに応じた体制を構築しているのだと思います。
検体検査は、日々の診療において重要な役割を担っており、臨床にとっは、非常時であってもできるだけ停止して欲しくない検査の1つだと思います。

しかし、平常時とすべて同じように対応できるわけではありません。できることとできないことを知っておくべきだと思います。患者様のため、できる限り多くの検査を行いたいと考えるかもしれません。しかし、受付業務だけ考えても、システムのない状況は想像以上に煩雑な作業となります。依頼通りに検査を行い間違いなく報告するという普通のことが、極めて困難なことになりかねません。

システム停止時には、検査項目を絞ることも必要でしょう。追加項目は受けられない、といった制限も必要かもしれません。復帰後の検査結果の取扱いも、電子カルテの検査結果欄に反映させるのではなく、報告書をスキャンして取り込むといった対応にすべきでしょう。「何でもする」という気持ちは大切ですが、万が一間違いが起こると、患者様の生命を脅かすことにもなりかねません。確実に対応できる業務範囲を見極めておくことが重要だと思います。

非常時には臨機応変な対応が求められます。概要はマニュアル化していたとしても、状況に応じた判断が求められます。そして、的確に判断するためには、まず、平常時の業務内容を正しく理解していることが重要です。さらに、システムがどのように構築されているか、電子カルテと検査システムとの連携や、検査システムと検査機器との接続なども、知識として持っていると役立つと思います。

システム停止時の対応をシュミレーションしておくことも大切でしょう。システム導入前の業務手順なども、話を聞く機会があれば聞いておくと良いのではないかと思います。1度でも聞いておくと、不測の事態に役立つものです。

電子カルテや検査システムは、メーカーによって異なりますし、施設ごとにカスタマイズされているので、ここで考えた内容は必ずしも当てはまらないかもしれません。また、システム停止時の対応も、より安全で効率の良い方法を構築されている施設もあると思います。こういう考え方もあるという一例として捉えていただければと思います。


検査室のシステム化については次の記事でどうぞ
システム停止についてはこちらの記事もご覧ください
通常の検査結果の判定のしかたについては次の記事で書いています

実際サイバー攻撃に関する記事です。



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