蓄尿

蓄尿してくださいって言われたけど、どうやってするのかな・・・
「蓄尿」とは、一定時間に排泄された尿をすべて専用の容器に入れて保存することですが、聞いたことはあるでしょうか。実際に蓄尿をしたことがある方はあまり多くないかもしれませね。
蓄尿については「尿検査のこと」(尿検査のこと 1[採尿])や検査結果のこと(検査結果のこと 2[腎機能])でもふれていますが、ここで、あらためて「蓄尿」について考えます。

蓄尿の目的と方法
蓄尿は主に腎機能の評価のために行います。
蓄尿する時間は一定時間とされていますが、通常は24時間、つまり1日に排泄した尿を溜めて、その尿中の成分の分析をします。たとえば尿蛋白を測定すれば、尿蛋白の1日排泄量を知ることができます。また、尿量も大切な情報です。成人の場合、一日の尿量は通常1000ml~2000ml 程度と言われています。水分の摂取量や体調によって変化しますが、極端に多い場合や少ない場合は、何らかの異常が考えられます。

蓄尿で測定する項目
尿中の成分の排出量は、昼夜や食事、運動などの影響を受けます。そのため、随時尿ではいつの尿で検査したかによって測定値が変わってきます。24時間蓄尿することによって、そのような影響がなく、正確な排出量を知ることができます。
蓄尿で測定する主な項目をいくつかあげてみます。
こんなことがありました

蓄尿検査は、一定時間に溜めた尿を提出していただいて検査をします。「尿を溜めるだけ」なのですが、なかなかうまくいかないことが多い印象です。
入院と外来、また病院によって多少状況が変わると思いますが、患者様ご自身が普通にトイレに行くことができる場合、スタッフがやり方をご説明して、ご自身で溜めていただくことになります。この時ありがちなのは、「1回溜めるのを忘れました」というものです。通常1日の排尿回数は5回から7回程度と言われています。このうちの1回なわけですが、尿は毎回同じではありません。そのために24時間蓄尿をして検査するともいえるわけです。1日のうちどの尿を溜め忘れたのかによって内容が全く変わってしまいます。
ただ、この点をご理解いただくのは意外と難しい印象があります。患者様だけではなく、医療スタッフにもご理解いただけないことがありました。蓄尿が終わる前に、「尿の一般検査(定性・沈渣検査)のための採尿をした」と言われれることが少なからずありました。尿量だけは把握していて、蓄尿量「〇〇〇ml+〇〇ml」のように記載されていて、これはどういう意味ですかと問い合わせると、先のように「尿検査に提出した」という回答なのです。尿量だけわかってもその尿が混ざっていなければ正しい蓄尿とはいえません。依頼項目の測定をすることは可能ですが、正しい1日排泄量やクレアチニンクリアランスを報告することはできなくなります。その場合「参考値」としたり、検査を中止にするという対応になりました。
また、外来で蓄尿をする場合も同様です。蓄尿の方法は十分にご説明し、あるいは説明の文書をお渡ししたりするのですが、間違えてしまう場合もありました。「1回入れ忘れ」だけでなく、「終了時間を間違える」といったこともありました。「何日にもわたって蓄尿をしていた」という例もありました。
蓄尿するというのは、結構煩わしいものだと思います。トイレにいくたびに採尿容器をもっていき、採尿した尿を蓄尿容器に移す作業をしなければなりません。でも、この「蓄尿」をきちんと行ってはじめて蓄尿検査が成立するのです。正しく理解してご協力いただきたいと思います。
正しい検査結果のために
「蓄尿による検査」はあまり馴染みのないものかもしれません。腎機能の検査には、「eGFR」といった血清だけで評価できる項目もあります。(参照:検査結果のこと 2[腎機能])衛生面などでも気になる点はあると思います。昔・・・30年位前とか・・・に比べると、蓄尿による検査は減っている印象です。
でも、医師が蓄尿の検査項目を依頼をしたのであればそれは必要な検査なのです。そして、正しい検査結果を得るためには、正しい検体採取が重要です。蓄尿も正しく行わなければ意味がなくなってしまいます。1回の溜め忘れで正しい評価が難しくなるのです。このことは、蓄尿の検査に携わるすべての人にご理解いただきたいことです。
面倒で煩わしい蓄尿ですが、必要になったら、正しい理解のもときちんと行いたいものです。「たかが蓄尿、されど蓄尿」です。

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