血液学検査1

検査結果の血液検査って何がわかるのかな
健康診断の結果や病院での採血の検査結果をみると、「血液学検査」あるいは「血液検査」という欄があると思います。
これがどのような検査かご存じでしょうか。
採血をした血液中の成分を調べることも血液検査といえますが、ここでは検査結果の一覧の中にある、検査の1分野としての「血液学検査」について考えていきます。
血液学検査とは
「血液学検査」は赤血球、白血球、血小板などの細胞成分の数や大きさ、血液の凝固因子の量など血液の固まる力などを調べる検査です。ここでは、その中で、細胞成分の数や大きさを調べる検査である「全血球計算血算について取り上げます。
全血球計算(血算)

血液中の赤血球や白血球などの数を測定する検査は「全血球計算(CBC : Complete Blood Count)(血算)」と呼ばれます。
健康診断などで、馴染みのある項目ではないかと思います。
血算の主な項目をあげてみます。
血液像検査
血液像検査とは
血液には赤血球、白血球、血小板など、血液細胞と呼ばれるさまざまな細胞が存在します。
「血液像検査」は、この血液細胞の数や形態を調べ、分類したり異常の有無を調べる検査です。

血液細胞の検査は、「自動血球計数装置」、あるいは「多項目自動血球分析装置」などと呼ばれる自動分析装置を使用して検査します。これらの装置は細胞の数の計測と細胞の分類を行うことができます。
血液細胞は、数的な異常も問題になりますが、それぞれの形態も、疾患や身体の状態を示唆する特徴的な変化が認められることがあります。したがって、血液細胞の形態を調べることは重要な検査です。

現在では、血球の分析装置の精度は優れていて、機械による分類がそのまま検査結果として報告されることも多くなっています。しかし、機械による分類に異常が認められる場合、標本を作製して染色をし、顕微鏡で観察する目視法を行います。
施設によって、特定の診療科の検体については異常の有無に関わらず目視法を実施する場合もあります。また、細胞の数的異常があると目視法を実施するという場合もあります。

白血球の分類
白血球は、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球の5種類の細胞に分類することができます。それぞれの細胞は特徴的な働きを担い、さまざまな病原体などから身体を守っています。
白血球の数の増加は、多くの場合、感染や炎症が示唆されますが、白血球を分類し、どの細胞が増えているかを調べることで、より詳細な状態を推測することが可能となります。
血液学検査の標準化
血算の標準化

血液学検査においても、「標準化」不可欠です。どこで検査しても同じ結果が得られるということは、正確な診療、診断に重要です。(「標準化」についてはこちらを👉標準化)

血算の各項目も、共用基準範囲に提示されているので、標準化の方向へ動いているといえます。
しかし血算の場合、測定結果の表示単位が施設ごとに異なり、診療に携わる医師に混乱を招くこともありました。例えば、白血球数の結果では、「×10³/μL」、「×10²/μL」、「/μL」、また、「×10⁹/L」などの表示単位が使われています。これは、血液1μLあたり白血球が6300個の場合それぞれ、6.3×10³/μL、63×10²/μL、6300/μL、6.3×10⁹/L、となります。

共用基準範囲の単位としては「×10³/μL」が採用されているので、これに統一されていくものと考えられます。しかし、施設によりますが、長年使用している表示単位を変更するのは抵抗がある場合もあり、すべての施設が同じ表示単位になるのは時間を要するかもしれません。
したがって、結果を確認する時には、表示単位も確認することが大切です。特に異なる施設での結果を比較する場合には、念のため表示単位を確認してから数値を比較した方が良いと思います。
血液像の標準化

血液像は、赤血球、白血球、血小板などの数や形態などを観察し、分類する検査です。したがって、この検査も標準化は重要です。

自動分析機で検査を行う場合は、ある程度統一した基準で分類されるといえます。しかし、機器の製造メーカーごとの特徴などもありますので、完全に同じ結果にはならないかもしれません。

技師が顕微鏡で検査をする場合には、「標準化」はより厳しいといえます。
顕微鏡で検査をするにあたっては、まず標本を作製し染色をします。この工程は、もちろん教科書的に手順や方法が定められています。しかし、実際の標本は、施設ごと、また作成した技師ごとに、微妙に違ったものになることが少なくありません。そして、顕微鏡による標本の観察は、経験や知識の差などで個人差が大きくなりがちです。検査結果には当然客観性が求められますが、主観的になりがちなことも否めません。
このような問題が解決できなければ、「どこで検査をしても同じ結果」とはなりません。そのためのさまざまな取り組みが行われています。

標本の作製方法、赤血球の形態や白血球の分類基準の明確化など、標準化のための取り組みが関連学会を中心に行われています。また、各施設は、技師間の判定のばらつきが小さくなるよう、教育や、内部精度管理として「目合わせ」を行っています。「目合わせ」は複数の技師が同じ標本を観察して、分類の仕方などを確認する作業で、判定基準を統一するよう努めています。
血算の結果
血算の結果は、すべての結果について標準化が完了しているとはいえないと思います。したがって結果をみる場合、基準範囲はその施設のものを参考にして考えていくことが大切です。
白血球数などは、基準範囲にある程度幅がありますが、個人の変動幅はそれほど大きくはない印象です。つまり、ふだんから少なめの人、多めの人、ということがあると思います。したがって、健康診断の結果など、体調が悪くない時の自分の数値を知っていることは大切かもしれません。

また、基準範囲から少しでも逸脱すると、検査結果には「H」や「L」が付記され、心配になることもあると思います。しかし、「H」や「L」が付記されたからといって、必ずしも疾患に繋がるとは限りません。例えば、白血球が 8.7×10³/μL で「H」が付記されたとしても、それがすぐに病的異常ではないことが多いと思います。数値データは些細な変動でも一喜一憂しがちですが、冷静な判断が必要です。

また、白血球の場合は総数だけでなく、白血球分類の比率も重要です。好中球が多いのか、リンパ球が多いのか、などによって、身体の状態を推測することができます。

赤血球、白血球、血小板のいずれも、数が基準範囲であっても、形態に異常がある場合もあります。疾患に特徴的な形態異常であったり、顆粒の出現、消失、など、さまざまな形態異常があります。これらは顕微鏡で観察して判明することになります。

このように、血算の結果は数値だけで判断が難しい場合もあります。自己判断は禁物です。
必ず医師の判断を聞いていただきたいと思います。

血液学検査でも、標準化、精度管理は重要です。
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