虫卵検査

虫卵検査ってどうするのかな・・・
「虫卵検査」を聞いたことはありますか。
これも便の検査で、体内に寄生虫がいるかどうかを調べます。
現在ではあまり馴染みのない検査かもしれませんが、少し説明してみようと思います。

虫卵検査の目的
「虫卵検査」は、便を検体として「虫卵」つまり「寄生虫の卵」の有無を確認し、その種類を特定することを目的としています。
消化管に寄生する寄生虫はその虫卵や幼虫などを排出するため、便を検査することによって、その感染の有無を確認し特定することができます。

寄生虫の感染
寄生虫の感染は、汚染された食べ物、土壌などを介して体内に寄生虫が侵入することによって起こります。

どんな時に検査をするか
寄生虫の感染を疑うのは、生水・生食の摂取のような感染の機会がある時、腹痛や下痢、原因不明の発熱や倦怠感、貧血などの症状が長引く時などと言われています。海外渡航歴がある場合もその対象となります。
また、寄生虫に感染すると好酸球が増えると言われています。そのため、好酸球増多症の場合にも寄生虫感染を疑って検査をする場合があります。

虫卵検査の検体
一般的に虫卵検査は便で検査します。
検査には自然排泄便が望ましく、新鮮な便の方が良いとされています。
産卵数やタイミングが寄生虫の種類によって異なるので、2日間または3日間の採便による検査が良いとされています。
採便の容器は、保存液のようなものが入っていない密閉できる採便容器を使用します。

ぎょう虫検査
ぎょう虫検査は、以前は小学校などで一斉に行われていました。
子どものころに経験された方もいらっしゃると思います。
1961年から学校保健法で実施項目となり、2015年度末まで実施されていました。
ぎょう虫はヒトからヒトへ感染するヒトの腸に寄生する寄生虫です。集団生活で感染が拡がるため、一斉に検査し駆除する方法がとられていました。
ぎょう虫検査は、セロハンテープ法という方法で行います。
ぎょう虫はヒトの大腸や直腸に寄生し、肛門周囲に産卵します。そのため、粘着性の高いセロハンテープで卵を採取して検査をします。

現在では感染率が減少しています。
そのため、学校保健安全法の改正に伴い、2015年度末で学校の健康診断の項目から削除されました。
したがって、2016年4月以降は、学校などでの検査は行われていません。
虫卵検査の方法
便による虫卵検査は、直接塗抹法と集卵法があります。
また、ぎょう虫卵の検査はセロハンテープ法で行います。
直接塗抹法は、便をスライドガラスに塗布し、顕微鏡で観察する方法です。
集卵法は、浮遊法と遠心沈殿法があります。それぞれ専用の試薬を用いて、虫卵の比重差を利用して検出する方法です。
セロテープ法はぎょう虫卵の検出に限った方法です。
専用のセロテープを直接肛門付近に貼り付けてぎょう虫卵を採取し、顕微鏡で確認します。

- 直接塗抹法
- 集卵法:浮遊法、遠心沈殿法
- セロハンテープ法
ところで、アニサキスという名前はお聞きになったことがあるでしょうか。
アニサキスは魚介類に寄生する寄生虫です。
ヒトは、アニサキスが寄生した魚介類を摂取することによりアニサキス症をおこしますが、これは食中毒とされています。
アニサキスの検査は、内視鏡やX線などによって直接虫体を観察します。
虫卵検査の問題点
虫卵検査の現状
便の虫卵検査は多くの場合一般検査室、つまり尿の検査をしたり便の潜血検査をしている検査室で行います。
便の虫卵検査の検査件数は減っている印象です。地域、施設の事情にもよると思いますが、私が勤務していた病院では、この20年ぐらい検査の依頼がなかったと思います。
ただ、これは施設の特性のようなものも関係していて、たとえば一般病院の方が専門病院よりも依頼件数は多いのではないかと多います。

虫卵検査は特別難しい検査ではないと思います。
しかし、分析機で行うのではなく用手法で行うため、初めて実施するのは戸惑うことも多いと思います。
加えて、現在では実物を観察する経験があまりありません。
したがって、アトラスなどの文献の写真を頼りに観察することになり、判定はかなり困難になると思います。

虫卵検査の問題点
以前(20年以上前ですが)私が検査を行っていた頃も、毎日必ず検査依頼があるというわけではなく、時々検体が提出される程度でした。
便は食物残渣などが含まれているので、直接塗抹にしても、浮遊法でも遠心沈殿法でも、標本を観察する際には、その雑多な中から虫卵を探すことになります。
当時でさえ、少なくとも私の周りには、実際に虫卵を検出した経験がある技師は少なく、参考書を片手に標本を観察し、怪しいと思うものが見つかると数人の技師で観察し合ったりしていました。

虫卵検査の対象となるのは回虫、鞭虫、鉤虫などです。ぎょう虫もセロハンテープ法ですが虫卵検査です。
ちなみに、食中毒や感染症として扱われていますが、アニサキスや赤痢アメーバなども、ヒトの腸管でさまざまな症状を引き起こします。アニサキスの検査は内視鏡で直接虫体を観察しますが、赤痢アメーバは便の検査も行います。赤痢アメーバは腸管寄生性原虫で、便からアメーバ原虫を検出するだけでなく、抗原検査やPCR検査なども行われます。

虫卵検査が減っているのは、寄生虫の感染が減っているということだと思います。
国内、特に都市部においては、寄生虫感染症は減っています。ただ無くなったわけではないと思います。
また、海外も同様でしょう。海外渡航歴のある人が体調不良がある場合、寄生虫感染が検査の選択肢に入ってきます。

好酸球増多症という白血球の中の好酸球が増加した場合、寄生虫感染が疑われることがあります。その患者様の状況から寄生虫感染の可能性が低いと考えても、医師は寄生虫感染を否定するめに検査を依頼する場合があります。
つまり、検査件数は確実に減ってはいますが、検査そのものは無くならないということです。
将来的には、虫卵を顕微鏡で観察するといった方法以外の検査法が確立されるかもしれません。しかし現状は、直接塗抹法や集卵法で標本を観察るという検査法である以上、技術は一定水準を保つ必要があります。

もちろん、検査を継続していて、若い技師に教育を続けている施設もあります。
ただ、検査依頼が少ないと、経験をする機会が少ないとうことでもあり、技術の継承が難しくなるのも事実です。
このことは、今後の課題となるのではないかと思います。
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