血液学検査2

凝固検査って何がわかるのかな・・・
血液学検査1で「血算」について取り上げました。ここでは、「凝固検査」について考えようと思います。
凝固検査

「凝固検査」は、血液の「凝固(固まる)」と「線溶(血栓を溶かす)」、2つの働きに関する検査です。
出血のしやすさ、血栓のできやすさなどを調べます。
また、血液をさらさらにする薬である抗凝固薬(ワルファリンなど)のモニタリングに欠かせない検査でもあります。
凝固因子
血液が凝固するために、血液中にはさまざまな「凝固因子」と呼ばれる蛋白質が存在しています。

「凝固因子」とは血液が凝固するために働く蛋白質です。
主に肝臓で作られ、12種類ありⅠ因子からⅩⅢ因子(欠番があります)までの番号で呼ばれます。
凝固因子には内因系(血管内)因子と外因系(血管外組織)因子があります。

傷ができて出血が起こると、カルシウムイオン(Ca²⁺)などとともにこれらの因子が連鎖的に働いて(カスケード:滝)、血栓を作って傷口を塞ぎ止血します。凝固因子が1つでも欠けると血液が止まり難くなります。
内因系は、血管内の物質が接触して始まります。外因系は血液が血管外に出て組織液(組織因子)と混じることによって始まります。必要な因子が、血液の中にあるのが内因系、血液の外にあるのが外因系となります。内因系と外因系はそれぞれ開始されますが、最終段階は同じ経路に合流します。この最後の部分は共通系と呼ばれます。
凝固検査の主な項目をあげます。
凝固検査の標準化
凝固検査は、血液の固まる働きと固まりを溶かす働きを調べる検査です。
健康診断などではあまり馴染みがないかもしれませんが、手術前検査などには必ず含まれる検査です。

どのような検査でも同様だと思いますが、凝固検査も、病院ごとに検査結果が異なることは望ましくありません。
かねてより標準化の必要性は認識され、取り組みも行われています。
しかし、なかなか進んでいないのが現実です。
PTについては、ワルファリンの投与量管理のため、早くから標準化が進められました。
その結果、どこの施設でも、PTを測定するとPT-INRが報告され、ワルファリンの投与量が正しく管理されるようになっています。

しかし、ヘパリンの投与量管理にも用いられるAPTTについては、明確な標準化はなされていません。試薬や測定機器によって値の変動が認められます。
フィブリノゲン、D-ダイマー、FDPなども、標準化が推進されていますが、まだ達成されてはいません。試薬ごとに値がばらつく状態です。

標準化の取り組みとして、日本検査血液学会の標準化委員会が、「凝固検査検体の取扱いに関するコンセンサス」を2016年に発表しています。これには、使用すべき採血管、遠心条件や保存のしかたなどが定められ、各施設が遵守するよう求められています。

採血管については、抗凝固剤はクエン酸ナトリウムを使用し、クエン酸と血液の比率が「1:9」(クエン酸 0.2mlと血液 1.8mlを混合)と定められていますが、これについては広く浸透していると思います。
しかし、遠心条件「温度18℃~25℃、1500×g 15分以上、または2000×g 10分以上」については、遵守が徹底されているとはいえないと思います。

かつて、凝固検体の遠心分離は4℃が推奨されていた時代があります。また、遠心条件もコンセンサスより短時間で高速遠心で処理され、さらに、遠心力(g)ではなく回転数(rpm)を用いている施設が多かったのではないかと思います。
「凝固検査検体の取扱いに関するコンセンサス」は認識し、その重要性は理解されていると思います。しかし、これに沿って実務を変更するのは、設備その他さまざまな問題もあり、なかなか順調には進んでいないと思われます。

正しい結果のため検体の取扱いは重要です。検体の取扱いが検査結果に影響することはすでに確認されている事実といえます。検査を担当する技師はこれを真摯に受け止めなければなりません。
しかし、この点はすでに理解はされおり、今後、改善されていくと思います。
凝固検査の結果
凝固検査は、標準化が達成されていないため、各施設の基準範囲を参照して結果の判定を行うことが重要です。

凝固検査は、抗凝固剤と血液の混合比が定められています。
採血量の過不足は、検査結果に影響する場合があると考えられます。また、採血が順調にできず時間がかかると、やはり検査結果に影響する場合があります。
したがって、結果によっては再採血、再検査となることがあります。

凝固検査の場合、正しい検体採取は特に重要といえます。
手術や出血を伴う可能性がある検査などの場合、出血傾向があるか否かは重要な問題です。検査結果に応じて、対処が必要になる場合もあるからです。
また、特定の疾患の診断や重症度の判定などに、凝固検査が必須とされるものもあります。この場合も、やはり正しく採取された検体で検査をしなければ正しい判断はできません。
凝固検査の結果は、他の検査結果と同様ですが、医師の判断を仰いで下さい。
自己判断は禁物です。検査結果の誤った判断は命に関わることもあります。
必ず医師に相談してください。

血液学検査でも、標準化、精度管理は重要です。
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