標準化

新着記事

標準化

臨床検査での「標準化」とは、「どこで検査をしても同じ結果となる」ということです。「そんなこと当たり前」と思われると思いますが、実はこれがなかなか難しいことなのです。一つの検査項目について、測定方法がいくつかある場合があります。この複数に方法で検査した時、検査結果が必ずしも同じ値になるとは限らないのです。一つの病院でだけ検査を受けていればそれほど大きな問題にはならないかもしれません。しかし、A病院からB病院に転院した時、そのふたつの病院で検査方法が違い、同じ人が同じ項目を検査したにも関わらず検査結果が変わってしまったらどうでしょう。ご本人も困惑すると思いますが、何より診療が混乱してしまうことになりかねません。この問題を解消するため、「標準化」の取り組みが行われているのです。

基準範囲

健康診断の結果や病院での検査結果を見るとき、数値の横に「L」や「H」が付記されていてドキドキしたことがある方もいらっしゃると思います。これは、各項目に「基準値」あるいは「基準範囲」と呼ばれる値が設定されていて、測定結果をこれに照らし合わせて、基準範囲より低ければ「L」が、高ければ「H」が付記されるという仕組みになっています。ところで、検査方法や検査機器、検査試薬などによって測定結果が変わることがある、というお話をしましたが、そのような場合は「基準範囲」も当然変わることになります。これもやはり混乱を招くことになりかねません。

標準化への取り組み・・・その1

測定法や測定機器、測定試薬などの違いによって測定結果が変わってしまうという問題に対して、1980年代後半からさまざまな取り組みが行われてきました。臨床化学会を中心にした基準的測定法の確立に向けた活動に始まり、2000年代に入って日本臨床検査標準協議会(JCCLS)を中心とした活動につながっていきました。2004年に「臨床検査標準化基本検討委員会」を設置され、標準測定法の整備など様々な取り組みを進めました。日本臨床衛生検査技師会も2007年から臨床検査データ標準化事業を推進しています。2011年には4つの関連学会による「基準範囲共用化WG」が臨床化学会内に設置され、2019年に「共用基準範囲」が承認文書として公開されるに至りました。その間、基準的測定方法が確立され、その使用を広めるなど、標準化に向けて様々な取り組みが進められてきました。また、生化学検査の項目の中では、ヨーロッパなどの国々と検査法が異なるものがあり、これについても考慮して基準的検査法が確立されたものもあります。しかしまだまだ標準化は、生化学検査と血液検査の一部の項目に限られており、すべての項目が「どこで検査しても同じ結果」とはなっていません。また、すべての検査室、検査機関が同じ方検査方法を採用しているいうわけでもないのが現実です。このことも「どこで検査しても同じ結果」が完全に達成されていない一因かもしれません。

標準化の取り組み・・・その2

標準化に向けた取り組みとして、「品質保証施設認証制度」というものがあります。これは日本臨床衛生検査技師会が制定したもので、どこの施設でも適切な臨床検査を安心して受けられることを目指し、検査室で実施している項目について、検査室の品質が保証されている施設を認証するものです。また、国際標準化機構(ISO)が策定した臨床検査室の品質と能力に関する規格「ISO 15189」もあります。これはという臨床検査の品質と能力の向上を図り、患者の診療に不可欠な医療情報を提供することを目的とし、これを取得した検査室は国際的に通用するとされています。新しい治療薬や治療法に関して「治験」が大小さまざまな規模で行われます。世界的な規模で行われるような大きな治験では、その治験に参加する要件として、ISOの取得が求められる場合もあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました